『今日は平地でも初雪となるかもしれません
手袋・マフラーなど、しっかりと防寒してお出掛けください』
テレビからのお天気お姉さんの声が遠くから耳に入る。
アタシは洗顔、歯磨き、食事、化粧、髪のセットと慌ただしく部屋を移動する。
のんびりテレビを見てる時間なんてない。
レディーの朝は忙しいんだ。
それなのに・・・。
「千鶴!あんた今日もそんなカッコで行くの?」
カチャカチャと朝ごはんの食器を片付けている様子のキッチンから聞こえてくる声。
アタシの格好なんてどこから見てたんだか・・・。
今日も口うるさい母親のお小言。
はぁ・・・めんどくさ。
「かーさんみたいにオバちゃんじゃないからいーんだってば!!」
「そんなこと言って・・・お腹冷やしてたら大人になってから困るんだからね!!」
ああもう・・・毎日同じ事の繰り返し。
なんで母さんはこんなに毎日同じことばっかり言ってて飽きないんだろう?
アタシだったら絶対にイヤ。
こんな怒ってばっかりでつまんない毎日でいいのかな・・・?
忙しい時間の中、ふと考えてしまう。
「千鶴!!聞いてるのっ?!」
「はいはい、大人になったら考えるよ。じゃ、いってきまーす」
「ちょっ!!もー・・・」
このまま家に居てもお小言が増えるだけ。
きっとまた成績とか、進路とか・・・。
最後は同じ所に行きつくんだから。
早々に家を出て学校へ向かう。
「さむ・・・」
寒くなると誰に伝えたい訳でもなく、無意識のうちについ漏らしてしまう独り言。
お小言を言われて朝から疲れたのと
感じずにはいられない身をきるような寒さ。
そんな日でも学校に向かわなくてはならないと思うと、足取りも重い。
寒さの為に言葉とともに自分の周りが白い吐息に包まれる。
「・・・・・ん?」
妙な違和感を覚えふと空を見上げる。
雲ひとつない綺麗な青空。
冷たい空気に空は澄んで、アタシの白い吐息が混じりキラキラと輝く。
「・・・・・・」
「・・・きれ〜♪」
いつもと同じつまんない日常のはずなのに
毎日はいつも変化している。
アタシらしくない!!
大きく一つ深呼吸してから空に向かって笑って見せる。
さっきまでもやもやしていた気持ちが明るく、まっさらになる。
「きもちいー!!」
足取りも軽く学校へ向かおうとした時…。
「・・・・・・なにしてんの?」
「うわっ!!びっくりした〜、なんだよ龍」
「・・・ニヤニヤしてキモい」
こいつ…いつから見てたんだ。
ま、こいつはアタシがヘンだろうと別に何も思わないだろうけどな。
「な〜んか、寒くなったな〜と思って♪」
「それでなんでニヤニヤすんだよ・・・」
「龍にはこのオトメゴコロはわかんないだろーね♪」
「・・・おとめ?」
急に龍が思いだしたように笑うから・・・。
「アタシだって、乙女心くらい持ってんだよ!!」
「・・・いて」
なんかせっかくいい気分だったのに
龍の態度にちょっとムカついたから殴ってやった。
「これのどこが・・・」
「心としぐさは違うんだってば!!」
「・・・・・・」
「・・・なにさ」
まだ殴られた肩をさすり、煮え切らない龍の姿に仕方なく龍の話を聞く。
「・・・例えば」
「は?」
何をたとえ話と思い耳を疑ったけれど。
龍は地面を指差して言葉を続けた。
「お前、昔氷割りまくってただろ」
「・・・こおり?」
未明から氷点下を記録していた気温。
自分では気付かなかったけれど、地面には薄氷が張っていた。
これも、いつもと同じなのに違う日常。
だけど・・・。
「氷割りまくってたら、いつの間にか迷子になって・・・めちゃくちゃ足濡らして帰ってきてた」
「んなっ!!昔の話を・・・」
龍は声をあげて笑いだした。
徹にも言われた事があったけど・・・。
本当に自分の小さい頃を思い出すと、つくづく自分がとんでもない奴だと思う。
でも今は・・・。
「もー割らないもん」
「割りたいくせに」
自分でも不思議だけど・・・。
「割りたい好奇心よりも綺麗だなって思う方が強い」
「どーだか」
自分でも気付かなかった事だけど。
徹の事で、アタシってまだまだ子どもだなって思ったけど。
「爽子のおかげかな?」
「・・・黒沼?」
彼女に出会ったから。
前向きでひたむきな姿に
他人の事を思いやれる姿に
爽子に色んな気持ちを教えてもらったから。
自分が変われたのかもしれない。
爽子と出会わなかったら、こんな気持ちにならなかったかもしれない。
「さ、学校行くよ!!」
もう一度龍の肩を叩き、氷をよけて走り出す。
家に帰ったら、少しだけ母さんの話でも聞いてやろっかな。
少しだけアタシが大人になれたのを感じた季節の変わり目。
子どものような大人のようなティーンエイジャーの一日。
二日連続・・・初雪のお話は10月には書いていたので。
昨日氷点下の中、自転車で出勤していて。
見事に氷を踏み砕きながら走らせましたよ。
さて・・・連載のお話の前に読み切りばっかり書いててスミマセン。
今年は消えないつもりでは居ますが・・・どうかな。
見捨てないでいてくださったら嬉しいです。